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広報しき 令和元年8月号

わたしたちの健康「VEGF阻害薬の硝子体注射(眼病治療について)」

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埼玉県志木市

朝霞地区医師会 大野尚登(ひさと)

VEGF(血管内皮増殖因子)とは、血管新生や血管透過性亢進(こうしん)などを誘導する分子です。このVEGFが病態に関与している眼疾患は多く、例として中心窩下(ちゅうしんかか)脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における黄斑下新生血管、糖尿病黄斑浮腫などがあります。それらに対して保険適用できる薬が、VEGF阻害薬(抗VEGF薬)です。
現在、保険診療で認可されている抗VEGF薬は、ベガプタニブナトリウム(商品名:マクジェン(R))、ラニビズマブ(商品名:ルセンティス(R))、アフリベルセプト(商品名:アイリーア(R))の3剤ですが、特にルセンティス(R)、アイリーア(R)の2剤が使用されることが多いです。これらの薬剤は眼球に直接注射(硝子体注射)します。両薬剤とも、脳卒中の既往歴・危険因子のある患者さんに対しては慎重投与することとなっています。
一般的に抗VEGF薬を使った療法は、視力の改善を目的とした導入期と、改善した視力を維持するための維持期に分けて考えられており、これまでに様々な投与方法が報告されています(表1)。いずれの疾患においても、抗VEGF薬の適応があれば、できるだけ速やかに治療を始めることが重要です。導入期に徹底した治療を行うことによって、維持期の治療回数の減少や長期にわたる良好な視力維持にもつながると考えられるため、導入期の治療回数は特に決めずに、視力や病態の改善がみられている間は継続して治療を行うことが望ましいです。ただし、あまり効果がみられない場合には漫然と投与を行うべきでなく、他治療の併用や変更を早期に検討する必要があります。
投与方法には、病態の悪化の有無に関わらずある一定の投与間隔で計画的に治療を行う固定投与、病態の悪化を認めた場合に投与を行う必要時投与、病態の悪化の有無によって投与間隔を調整しながら計画的に治療を行うtreat and extend(TAE)法があります。いずれにせよ、少ない治療回数で視力を維持することが重要です。
抗VEGF療法は、適応疾患の大多数において従来の治療法よりも優れた視機能改善効果を示しますが、一定の割合で抵抗例も存在しています。別の治療法に切り替えるタイミングとしては、○抗VEGF薬により改善した症状が安定しているとき、○抗VEGF薬を継続しても視機能と病状の安定化しないとき、○患者の事情により治療の継続が困難になったときの3つのケースが考えられます。
抗VEGF薬の出現により、適応疾患における視機能は劇的に改善しましたが、各疾患の発症にはVEGF以外の因子も関与しており、抗VEGF薬だけで完全に病態を安定化させることは難しいです。抗VEGF薬と光線力学療法、ステロイド、光凝固、硝子体手術などをうまく組み合わせることで、より質の高い医療を患者さんに提供できるようになりました。…とは言えまだ道半ばです。今後の臨床研究の発展に期待したいと思います。

問合せ:朝霞地区医師会
【電話】048-464-4666

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