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広報しき 令和元年5月号

わたしたちの健康 「百日咳(ひゃくにちぜき)」

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埼玉県志木市

朝霞地区医師会/北澤重孝(きたざわしげたか)

百日咳とは特有のけいれん性のせき発作(痙咳(けいがい)発作)を特徴とする急性呼吸器感染症です。
せきが14日以上続き、特徴的なせき(1)発作性のせき込み(2)笛の音のような息の吸い込み(3)せき込み後の嘔吐(おうと)の1つ以上を伴う場合に疑います。ワクチンの普及で減少していましたが、近年増加傾向にあり、特に成人患者の増加が顕著(けんちょ)です。年齢分布では6か月未満と9歳に症例のピークを認め、30代、40代にもなだらかなピークが報告されています。
百日咳は百日咳菌の感染により起こります。潜伏期間は7~10日で最初は普通のかぜ症状で始まり、次第にせきが増えてきます(カタル期)。乳児、年少児、典型例では、ゴンゴンゴン・・・ゴンと発作性の短いせきが連続的に起こり(スタカート)、その後にヒューという笛の音のような息の吸い込み(笛声)が続きます。このようなせき発作を激しく繰り返します(レプリーゼ)。年長児、成人、非典型例ではせきだけがずっと続きます。せきの強い時期(痙咳期)が2~3週間続き、その後せきの発作は少しずつ軽くなり、2~3週間で認められなくなります(回復期)。発熱はありません。百日咳菌は体内で咳中枢を刺激する毒素を大量に産生します。この毒素のためにせきが激しく、菌を除去した後もかなりの期間せきが続きます。息をつめてせきをするため、顔面のむくみ、点状出血、眼球結膜出血、鼻出血などがみられることもあります。非発作時は無症状で何らかの刺激が加わるとせきが誘発され、夜間に多いのが特徴です。また危険な合併症に脳症があります。
母親からの胎内での移行免疫が十分でないため、乳児期早期から感染罹患(りかん)する可能性があります。幼若乳児では典型的なせきはみられず、単に息を止めて無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止と進展することがあります。生後6か月以下の乳児では死に至る危険性があります。感染源の82%が家族からと推定されています。
30代・40代にピークがある成人の百日咳は、せきが長期に持続しますが、典型的な発作性のせきはみられず、診断が見逃されやすく感染源になるのが特徴です。

●診断
診断は、咽頭ぬぐい液による分離培養、遺伝子検査または血液による抗体価検査があります。

●治療
治療は百日咳菌に有効な抗菌薬(マクロライド系)を処方します。5~7日間程度服用します。家族内感染の場合は特徴的なせきが出る前であれば症状の軽症化が期待できますが、多くの場合典型的なせきが出始めてからまたは長引くせきの場合に初めて百日咳が疑われます。この時期の抗菌薬治療の病状改善効果は低く、除菌されてもせきはすぐには軽快しませんが、感染源となり周囲への感染を防ぐことができるため重要で抗菌薬投与の意義があります。

●保育所・学校
学校保健安全法により「百日咳特有のせきが消失するまでまたは5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで」出席停止です。

●予防
我が国で開発されたDTaP(沈降精製百日咳ジフテリア破傷風)ワクチンの高い有効性と安全性により世界的に小児の百日咳患者数は低く抑えられています。一方、思春期・成人の百日咳が乳幼児の感染源になっていることが問題となっています。現在、DPT-IPV(四種混合ワクチン:ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)が定期接種に導入され4回接種します。百日咳ワクチンの免疫効果は4~12年で減弱していきます。日本でも2期接種の年齢(11~12歳)でDTトキソイドに百日咳対策を加える検討がされています。国内でも重症百日咳の報告があり、感染源対策は喫緊の課題といえます。

問合せ:朝霞地区医師会
【電話】048-464-4666

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